小説『ファントム』を読む。

世の中の大人は知識欲が高まって読書をする、
すてきアダルティーが多いのではないかと思います。
一方のわたしは読書から遠ざかっている状態です。

そんなわたしがずっと忘れられずにいた小説がありました。
なんのきっかけだったか、
ある日その小説のことをふと思い出し久々に読書をしてみました。


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小説『ファントム』とは?

わたしが忘れられなかった小説。
それはスーザン・ケイ著の『ファントム』という長編小説でした。
『ファントム』とは怪人を意味し、この小説の主人公のことでもあります。

ファントム〈上〉 (扶桑社ミステリー)  ファントム〈下〉 (扶桑社ミステリー)

怪人と言えば有名なのがオペラ座の怪人というミュージカル。
醜い容姿を仮面で隠しオペラ座の地下に住む怪人が、
ある日若く美しい女優のクリスティーヌに恋をし、
彼女の為には悪にも手を染める…
ものすごく適当に申し上げればこんなストーリーだった気がします。
お恥ずかしい話、実はわたしミュージカルも映画も見たことがないのです。
なので本当に適当に言っています。違ったらごめんなさい。

とにかく、この小説はそんなオペラ座の怪人が主人公なのです。

小説『ファントム』との出会い!

学生の頃、学校の図書館で読んだハードカバーが出会いでした。
多感だった時期に読んだ『ファントム』は実に甘美に感じました。
あまりにも感動して、学校の図書担当の先生に買わせてくれと頼み込んだほど。
もちろん駄目でしたけれど。
(本屋で取り寄せるという頭はありませんでした。アホです)
何度も何度も借りて読みました。
大人になってからもときどき思い出すぐらい好きでした。

今回もせっかく思い出したので読んでみたい!となり、
大人になったのでさっさとネットで買ってもよかったのですが、
一応市営図書館にあるか検索してみたらあるではありませんか!
これは借りるしかない!!
書庫にしまわれていたのを引っ張りだしてもらって読んでみました。

小説『ファントム』を読む!

オペラ座の怪人が主人公といっても、
あの有名なミュージカル本編が舞台ではありません。
正確には物語終盤にはそのあたりのシーンも出てくるのですが、
この小説は怪人の人生そのものにスポットをあてています。
つまり公式なものとは違い著者の創作小説となります。
しかし緻密な情報収集により創作なのに説得力があり、
あっという間に世界観に引きこまれました。


のちに怪人と自ら名乗るようになる主人公の名はエリック。
彼は生まれたときからおぞましい醜い容姿を持っていました。
実の母にも忌み嫌われ、愛されることを知らぬまま育ってしまった彼は、
完璧な紳士にして完璧主義の殺人者へと変貌を遂げます。

このエリックの幼少期から美麗な青年になるまでが物語の核です。
様々な場所を点々と放浪しながら成長をしていく姿を、
一緒に旅をしながら見守る感覚を覚えました。

多彩な才能に恵まれ、人を操ることに長けるエリック。
衝動的に殺人を犯す彼の姿と裏腹に、
表舞台の華やかなシーンはとても情緒溢れるものでした。
人々は男女問わず彼の美しい声に魅了され、いつしか畏怖と羨望を抱くのです。
彼の成長を見ているせいで想像力を駆り立てられ、
いつしか読んでいるわたしもそう感じるようになりました。
そして彼に想いをよせた多くの女性と同じように彼の顔を見たくなるのです。
醜い容姿に苦しむ彼の人生を散々見ているのに。
彼の声に踊らされ溺れたいとすら思うようになるのです。


そんなエリックが人並みに恋をしました。
でもそれは彼が死を迎えるほんの少し前のこと。
彼は巧みに色々な手法を用いて彼女を手に入れます。
それがまた、実に刹那的で破滅的。
誰も幸せになれないと、本人ですら分かっているのにその恋は止められないのです。
あまりにもその恋が切なくてわたしは涙せずにはいられませんでした。


そして物語は彼の死によって幕を閉じます。
決して報われる小説ではありません。
最後の最後すら、怪人は存在し続け胸中になんともいえない苦さを伴います。
しかし読み終わったときは、
ひとりの人間の人生を見終わった達成感に心地よい疲労を感じました。

ハッピーエンドではない。
怪人は決して善良な人間ではない。
でもわたしはこの怪人を愛しているし、
作中に出てくる人々も笑い、泣く、ふつうの人間ばかりです。
出てくる人物みなが愛しく思われます。


この小説の著者は女性です。
だからこそエリックはとても魅力的に感じるのだろうと思います。
女は女の惚れる男を知っている。

やはりわたしはこの小説が大好きです。
恐らく死ぬまで忘れることはないでしょう。
どうかこの隠れた名作が、多くの人に読んでもらえますように。



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ずっと怪人に恋してる。



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ファントム〈上〉 (扶桑社ミステリー)  ファントム〈下〉 (扶桑社ミステリー)


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